
「太陽光と蓄電池をつければ、電気代0円になりますよ」——よく聞く言葉です。我が家の2年分(24ヶ月)の電気明細を全部ひっぱり出して、本気で計算してみました。

結論を先に言うと、ちょっと意外な答えでした。蓄電池の営業さんのトークも、うちの実際の数字で検証してみたんです。
「電気代0円」「蓄電池で自給自足」——SNSや広告でよく見ますよね。我が家もパッシブハウスで太陽光を載せているので、「あと蓄電池を足せば0円では?」と何度も考えました。
そこで今回、我が家の2年分(24ヶ月)の電気明細(時間帯別の使用量・売電単価・プランの単価)をすべて使って、本気でシミュレーションしました。結論を先に言うと、我が家では蓄電池は「電気代0円」どころか、お金の面では元が取れないという答えでした。ただ、その理由は、最初に思っていたものとは違いました。
※この記事は2026年6月時点・我が家の実際の電気明細・九州電力の公式料金単価をもとにした試算です。電気プラン・FIT単価・発電量・生活スタイルで結果は大きく変わります。あくまで「我が家の場合」としてお読みください。投資判断に迷う場合は、特定の商品を売らない中立的な専門家にご相談ください。
まず、我が家の電気スペック
| 太陽光パネル | 4.8kW(蓄電池なし) |
| FIT売電単価 | 16円/kWh(約2年前に設置) |
| 年間売電 | 約3,492kWh(約55,872円) |
| 電気プラン | 九州電力「電化でナイト・セレクト22」 |
| 給湯 | エコキュート(深夜電力)/オール電化 |
契約プランの電力量料金(2024年4月・税込)はこちらです。
| 時間帯 | 単価 |
|---|---|
| 平日昼間(夏・冬) | 27.63円/kWh |
| 平日昼間(春・秋) | 24.74円/kWh |
| 休日昼間(夏・冬) | 22.01円/kWh |
| 夜間(22時〜翌8時) | 14.59円/kWh |
📌 「最近の値上げと関係ある?」と思った方へ(2026年6月時点)
・上の単価は「電化でナイト・セレクト22」のもので、2024年4月から据え置きです。2025年4月に旧オール電化メニュー(時間帯別電灯など)は夜間単価が値上げされましたが、このプランは対象外でした。
・ただし別途、燃料費調整額と再エネ賦課金(2026年度4.18円/kWh)が請求に乗ります。2026年は中東情勢の影響で燃料費調整額が上昇傾向で、九州電力を含む大手各社が2026年7月検針分から値上がり。一方2026年7月使用分からは国の電気・ガス料金支援(九州電力は3.50円/kWh割引)も入ります。基本単価は据え置きでも、実際の請求額は変動しているのが今の状況です。
意外だった事実:我が家、昼にけっこう電気を買っていた
シミュレーションの前に、明細を見ていて驚いたことがあります。我が家は昼間にもかなり電気を買っていました。
「昼は太陽光で発電しているから、昼の電気はほぼ買っていないだろう」と思い込んでいたのですが、24ヶ月分の時間帯別データを並べると、こうでした。
| 時期 | 昼間買電の割合 |
|---|---|
| 夏(7〜9月) | 約52% |
| 春・秋 | 約39〜49% |
| 冬(12〜2月) | 約36% |
| 年間平均 | 約44% |

特に夏は、昼の買電が52%。冷房をしっかり使うので、昼は太陽光の発電だけでは足りず、不足分を買っているんです。これは自分でも意外でした。つまり『昼の高い電気を買わずに済む』という話は、我が家にも当てはまる余地があったんです。

『うちは昼に電気を買ってない』って思い込んでたよね。明細をちゃんと見ると、夏は昼のほうが多いなんて。
シミュレーション①:蓄電池を足したら、得する?
では本題。蓄電池(8kWh・工事費込み約160万円。2026年の相場は150〜180万円)を後付けしたら、どうなるか。
蓄電池の仕事は「昼に余った太陽光を貯めて、発電が足りない時間に使う」こと。我が家の場合、貯めた電気を一番単価の高い昼間買電(夏なら27.63円+賦課金+燃調=実質約32円)にぶつけるのが、最もお得になります。
1kWhを蓄電池に通すと、こうなります。
- 浮くお金:高い昼間買電を回避(夏季なら従量27.63円+再エネ賦課金4.18円+燃調 ≒ 実質30円超)。自家消費なので賦課金もかからない
- 失うお金:今まで16円で売っていた電気を、売らずに使う。売電収入16円が消える
蓄電池8kWhで貯められるのは、現実的に年間約2,600kWhが上限。これを高い昼間買電のカバーに充てると——
| ケース | 実質負担 | 年間メリット | 回収年数 |
|---|---|---|---|
| 補助なし | 160万円 | 約3万円 | 約54年 |
| 国の60万円補助あり | 100万円 | 約34年 |

昼の高い電気を回避できるので、メリットは年に約3万円。これは決して小さくない。でも蓄電池160万円を回収するには54年、補助金をフルに使っても34年かかります。蓄電池の寿命は15〜20年。つまり、得はするけれど、寿命が来るまでに元は取れないんです。

『得はするのに、元は取れない』。ここがすごく大事なポイントですよね。
シミュレーション②:太陽光を増設したら、0円に近づく?
「では太陽光を増やせば?」屋根にはまだ余地があります。仮に4kW増設(既築の後付けで約128万円)すると、年間で約4,800kWh多く発電できます。
ただ、ここで壁になるのが「発電する時間」と「電気を使う時間」のズレです。増やした太陽光が発電するのは晴れた日中。でも我が家の昼間買電が多いのは、発電が消費に届かない時間帯(朝夕・曇雨天・夕方以降の冷房)。太陽光を増やしても、その時間の不足は埋められません。
結局、増えた発電のほとんどは16円で売るだけ。年間の売電増は約76,800円。FIT期間の残り8年で回収できるのは約61万円で、128万円の投資は回収できず赤字です。

『発電を増やす』だけでは0円にならない。発電した電気を、使う時間に合わせて取っておく仕組み(=蓄電池)が要る。でもその蓄電池が、さっきの通り元が取れない。ここが0円のむずかしさです。
「でも補助金が出るんでしょ?」も計算した
「蓄電池は国の補助金が出るから、もっと安くなるのでは?」その通り、補助金はあります。
- 国の蓄電池補助(DR家庭用蓄電池事業):上限60万円
- 自治体の補助が併用できる場合もある
ただし国のこの補助は2026年5月29日に予算上限で公募終了(次年度予算で再開の可能性あり)。また太陽光・蓄電池の住宅系補助(みらいエコ住宅2026など)は主に新築が対象で、すでに建てて住んでいる我が家の後付けは基本的に対象外です。
そして上の表のとおり、60万円の補助をフルに使っても回収は約34年。補助金は「入口の値段」を下げてくれますが、毎年の得(年約3万円)では、寿命までに埋めきれません。
つまり、営業トークは「正しい。でも元は取れない」
蓄電池の営業さんは、よくこう言います。
「蓄電池があれば、昼の高い電気を買わずに済むので、電気代が安くなりますよ」
正直に言います。これは我が家にも当てはまっていました。昼間買電が年44%(夏は52%)もあるので、それを蓄電池でカバーすれば、確かに年3万円ほど安くなります。「安くなりますよ」は嘘ではありません。
でも——「電気代が安くなる」と「投資の元が取れる」は、まったく別の話です。年3万円安くなっても、160万円(補助後100万円)の蓄電池は、寿命の15〜20年では回収できない。営業トークは「月々の電気代」の話をしていて、「投資の回収」の話はしていないんです。

『安くなる』って言われると、つい『お得なんだ』と思っちゃう。でも、かかったお金が返ってくるかは別なんですね。

そう。営業さんが嘘をついているわけじゃない。でも『電気代が下がる』と『買って得する』を、自分の中で分けて考えないといけない。ここを混同すると、150万円の判断を雰囲気でしてしまう。
営業さんは「年7万円お得」と言った。でも実際は…
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。蓄電池の営業さんは、我が家に「年間でこれだけお得になります」と、もっと大きな金額を出してきました。でも、自分で計算すると、金額がかなり違ったんです。
| 計算のしかた | 年間メリット | 160万円の回収 |
|---|---|---|
| 正確な計算(我が家) | 約3.0万円 | 約53年 |
| 営業式(売電の損を入れない) | 約7.7万円 | 約21年 |
| 営業式+満充電・高単価で強調 | 約9.6万円 | 約17年 |
同じ蓄電池なのに、年3万円と年7〜9万円。2〜3倍も違います。なぜこんなに差が出るのか。答えはひとつです。
「売電を捨てる損」を計算に入れているかどうか。
我が家は今、余った太陽光を16円で売っています。蓄電池に貯めるということは、その電気を売らずに自分で使う=売電収入(年約4.7万円)が消えるということ。これは確実に発生する損です。
- 正確な計算:「浮く電気代」から「失う売電収入」をきちんと引く → 年3.0万円
- 営業の計算:「電気代が浮く」ことだけを見せ、失う売電収入を引かない → 年7〜9万円
営業さんが嘘をついているわけではありません。でも、「もし蓄電池を付けなければ売れていたはずの電気」を損として数えないと、お得さは大きく見えすぎます。さらに「毎日満充電できる」「一番高い夏の単価で計算」という前提を重ねると、金額はどんどん膨らみます。

営業さんの計算と僕の計算、どちらも嘘ではありません。違うのは『売電を捨てる損』を入れるかどうか。我が家は今、余った電気を16円で売っています。蓄電池に貯めて自分で使うと、その売電収入が消える。これは確実に発生する損なので、計算に入れないとお得さを大きく見積もりすぎてしまうんです。

『年7万円お得ですよ』って言われたら、『それ、売電の損を引いた数字ですか?』って聞いてみるといいんですね。
蓄電池の見積もりをもらったら、ぜひ確認してみてください。「その試算、売電が減る分(機会損失)は引いていますか?」——この一言で、本当の数字が見えてきます。
「電気代が上がれば早く回収できますよ」も検証した
蓄電池の営業さんは、もうひとつこう言います。
「これから電気代は上がります。単価が上がれば、その分早く回収できますよ」
これも理屈としては正しいです。蓄電池は「高い電気を買わずに済ませる」道具なので、電気代が高いほど1kWhあたりの得が増え、回収は早まります。実際に、昼間の電気単価を上げて計算してみました。
| 昼間の電気単価 | 年間メリット | 160万円の回収 |
|---|---|---|
| 約22円(今の我が家) | 約2.9万円 | 約54年 |
| 28円 | 約4.5万円 | 約35年 |
| 32円 | 約5.6万円 | 約29年 |
| 40円 | 約7.7万円 | 約21年 |
確かに、電気代が上がるほど回収は短くなります。でも、ここで2つ、冷静に見ておきたいことがあります。
① そこまで上がっても、寿命に間に合わない。昼間単価が今の倍近い40円になっても、回収は約21年。蓄電池の寿命は15〜20年です。つまり電気代が劇的に上がっても、ようやく寿命と同じくらい。元が取れるかどうか、まだギリギリです。
② 「電気代が上がって得する」の裏側。この話は、よく考えると少し怖い前提に立っています。「蓄電池が得する未来」=「電気代がどんどん上がる未来」です。それは蓄電池でカバーできない分の電気代も上がるということ。家計全体で見れば、まったく嬉しい話ではありません。

『電気代が上がれば回収できる』は、本当です。でも、そこまで電気代が上がること自体が家計には大ダメージ。蓄電池の損得だけ見て『得した』と喜べる話ではないんです。それに、倍近く上がっても回収21年。やはり投資としては慎重に考えたほうがいい。

『電気代が上がれば得しますよ』って言われると、なんだか前向きに聞こえちゃう。でも普通に考えたら、電気代は上がってほしくないですよね。
ちなみに、我が家の「太陽光」は載せて正解だった
ここまで蓄電池に厳しい話が続いたので、「じゃあ太陽光も載せないほうが得だったのでは?」と思った方もいるかもしれません。そこも計算しました。結論は逆で、太陽光は載せて大正解でした。
| 太陽光 4.8kW | 蓄電池 8kWh | |
|---|---|---|
| 設置費用 | 約120〜134万円 | 約160万円 |
| 年間の経済効果 | 約11万円 | 約3万円 |
| 回収の目安 | 約11〜12年 | 約53年 |
我が家の太陽光(4.8kW)は、売電(年約5.6万円)と、昼の自家消費による買電回避(年約5.4万円)を合わせて、年に約11万円ぶんの働きをしています。設置費用は11〜12年で回収でき、パネルの寿命は20〜30年。回収後はずっとプラスです。
では、なぜ同じ「自家消費を増やす設備」なのに、太陽光は得で蓄電池は損なのか。違いはここです。
| 太陽光 | 蓄電池 | |
|---|---|---|
| やること | 電気を新しく生み出す | 電気を移すだけ(貯めて時間をずらす) |
| 1kWhの得 | 売電16円+自家消費の回避24円〜=まるごと得 | 回避24円−売電喪失16円=差額だけ |

同じ『自家消費を増やす設備』でも、太陽光と蓄電池は性質がまったく違います。太陽光は電気をゼロから生み出すので、作った分がまるごと得になる。一方、蓄電池はすでにある電気を貯めて時間をずらすだけ。しかも貯めるために、16円で売れるはずの電気を手放す。だから差額しか得しないんです。

『太陽光がダメなら蓄電池もダメ』じゃなくて、ちゃんと分けて考えるのが大事なんですね。うちは太陽光は載せて大正解でした。
「太陽光と蓄電池はセットで」とすすめられることが多いですが、この2つはまったく別の投資です。太陽光は発電して稼ぐ。蓄電池は電気を移すだけ。我が家の場合、前者は大正解、後者は時期尚早、という結論でした。
では、蓄電池は誰にとって”アリ”なのか
我が家には合いませんでしたが、蓄電池そのものを否定したいわけではありません。条件が合えば、十分に価値があります。
- FITが終わった家(卒FIT)。売電が8円前後まで下がれば、「売るより貯めて使う」価値が上がる
- 昼間の電気使用が多く、かつ昼間単価が高いプランの家。回避できる金額が大きい
- 停電・災害への備えを重視する家。これはお金で測れない価値。経済性とは別に検討する意味がある

我が家のように『FIT期間中(売電16円がまだ高い)・太陽光あり・後付けで補助も終了』という条件だと、経済メリットは出にくい。逆に卒FIT後なら話は変わります。大事なのは、自分の家の今の数字で計算することです。
とはいえ「ずっとダメ」ではない——蓄電池の将来とEVという選択肢
ここまで蓄電池に厳しい結論でしたが、誤解しないでいただきたいのは、「蓄電池は未来永劫ダメ」という話ではないということです。
① 蓄電池は、これから安く・高性能になる。蓄電池の価格は年々下がり、容量や寿命などの性能も上がっています。仮に本体価格が今の半分ほどになれば、同じ条件でも回収年数はぐっと現実的になります。今は「まだ早い」だけで、数年後にもう一度計算すれば、答えが変わっている可能性は十分あります。
② EV(電気自動車)を持つなら、話が変わるかもしれない。我が家は電気自動車に乗っていませんが、もしEVがあれば「V2H」という仕組みで、EVの大きなバッテリー(10〜80kWh)を家庭用蓄電池の代わりに使えます。家庭用蓄電池(8kWh前後)より容量がずっと大きいので、昼の余剰をたくさん貯められます。車として元々持っているものを”ついでに”家でも使える点で、蓄電池を単体で買うより合理的になる場合があります。
ただしV2Hも、機器+工事で110〜220万円とそれなりの初期費用がかかり、「売電16円を手放す損」は蓄電池と同じく発生します。「EVがあれば必ず得」ではなく、これも自分の家の使い方と数字次第です。

今は「まだ早い」というのが我が家の結論です。でも蓄電池は年々安くなり、性能も上がっています。本体価格が今の半分くらいになれば、同じ条件でも回収が現実的な年数に入ってくる。だから『蓄電池はずっとダメ』ではなく、『今の我が家の条件では時期尚早』というのが正確なところです。

『今は見送り、数年後にまた計算してみる』。それくらいの距離感がちょうどいいのかもしれませんね。
まとめ:「0円」より「自分の家の数字」
- 我が家は昼間買電が年44%(夏52%)。「昼は買っていない」は思い込みだった
- 蓄電池を足すと年3万円ほど安くなる。でも160万円(補助後100万円)の回収は34〜54年で、寿命内に元は取れない
- 太陽光の増設だけでは、使う時間とズレて売るだけになり、これも赤字
- 「昼の電気が浮く」という営業トークは正しい。でも”安くなる”と”元が取れる”は別物
- 蓄電池が向く家もある(卒FIT・昼の使用が多い・停電対策)。結局は自分の家の数字次第
「電気代0円」は魅力的な響きです。でも、それを追って150万円を払う前に、ぜひ自分の家の明細(時間帯別の使用量・売電単価・プランの単価)を並べて計算してみてください。我が家のように「得はするけど、元は取れない」という答えが出ることも、珍しくありません。

明細を全部見直すのは大変でしたが、おかげで『うちは今のままでいい』と数字で納得できました。なんとなくの不安で高い買い物をせずに済んだのが、一番よかったです。

0円の響きに飛びつかず、自分の家の数字で確かめる。これが後悔しない一番の方法です。投資判断に迷ったら、蓄電池や太陽光を『売らない』立場の専門家に相談してみてください。それでは、また次の記事で。
我が家の電気代の実測データはこちらの記事、夏の電気代はこちらの記事で公開しています。あわせてどうぞ。
【参考】電力量料金:九州電力公式「電化でナイト・セレクト」料金ページ/再エネ賦課金(2026年度4.18円/kWh):経済産業省・資源エネルギー庁/蓄電池補助金(DR家庭用蓄電池事業):環境共創イニシアチブ(SII)/住宅補助金:みらいエコ住宅2026事業(国交省・環境省)。補助金は予算・年度により変動するため最新は各公式でご確認ください。電気使用量・売電額は我が家の実際の検針票に基づく実測値です。

コメント